「相続税って、うちにも関係あるんでしょうか?」
これは相談の場で、最も多く聞かれる質問の一つです。ニュースや雑誌などで“相続税対策”という言葉を目にすると、「自分の家庭も準備が必要なのでは」と不安になる方も多いようです。
しかし実際には、相続税がかかる人はごく一部。日本全国で亡くなった方のうち、相続税の申告が必要になるのは約10%程度といわれています。つまり、残りの9割のご家庭には、そもそも相続税の納税義務も申告も必要ない、というのが実情です。
その分かれ目となるのが「基礎控除」と呼ばれる非課税枠の存在です。
相続税には、遺された財産が一定額を下回っていれば税金がかからないという仕組みがあり、その金額は以下の式で計算されます。
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば、配偶者と子ども2人の家庭なら、3,000万円+(600万円×3)=4,800万円までは非課税。これを超えた部分に対して、相続税がかかるというわけです。
ただしここで注意したいのが、「財産の評価方法」によって、課税の有無が大きく変わるという点です。
たとえば、現金や預貯金、上場株式は、基本的にそのままの金額で評価されます。一方、不動産については、相続税評価額(路線価や固定資産税評価額など)で計算されるため、実際の市場価格よりも2~3割ほど、乖離が大きいところでは5割低くで評価されることも少なくありません。
こうした評価の違いによって、見た目の資産額ほど課税対象が大きくならないことがよくあるのです。
だからといって、「うちは税金がかからないから何もしなくていい」というのは早計です。
たとえ税金が発生しなくても、不動産の名義変更や預金の解約には、相続人同士の合意が必要になります。加えて、きちんと整理されていない財産があると、手続きが進まなかったり、家族間でトラブルになったりすることもあります。
まずは、自分の家庭にどれだけの資産があるのか、誰が相続人になるのか、そして基礎控除の枠内に収まるのか。
これらを一度、冷静に確認しておくだけでも、相続対策の第一歩になります。