事業承継について
今回は、事業承継について書かせていただきます。「事業」の「承継」ですから、対象となるのは事業を行っている方々です。「事業」というのは、デジタル大辞泉によれば、「生産・営利などの一定の目的を持って継続的に、組織・会社・商店などを経営する仕事」とあります。すなわち、株式会社などの法人を立ち上げて社長となっている方だけでなく、個人事業として商店などを営んでいる方も対象になります。そして、その事業を「承継」する、次の代へ引き継ぐことが、「事業承継」ということになります。
では、なぜ事業承継についてコラムを書いているのかというと、何年も前から言われていることではありますが、現在、全国的に経営者の高齢化が進み、企業存続を図るうえで「事業承継」というのが大きな課題となっているからです。その中でも、後継者不足というのは深刻な問題となっています。
後継者不在の問題
帝国データバンクの全国企業「後継者不在率」動向調査(2020年)によると、全国26万6000社の後継者の決定状況と事業承継動向について調査を行ったところ、後継者不在率は3年連続で低下しているものの、全国平均で65.1パーセントと高い割合を維持しています。DayLifeを読まれている方は、岡山や広島の方が多いかと思いますが、中国地方に限っていえば、全国平均を大幅に上回る70.8パーセントもの後継者不在率となっています。
また、事業承継は、思い立ったら翌日にでも承継が完了するというものでもありません。代表取締役という地位だけのことでしたら、すぐにでも交代することは不可能ではありません。しかし、親族内承継や内部承継ということでしたら、従業員や取引先との関係なども考える必要があり、それを考慮すると最低でも5年、余裕を見れば10年くらいの計画性をもって進めていきたいところです。
親族内承継とM&A
親族内承継というのは、文字通り親族内で、すなわち親から子へといった承継の仕方で、日本の中小企業では昔からよくある承継の形ですので、誰しもイメージがしやすいのではないでしょうか。内部承継というのは、子がいなかったり、子がいても別の進路を歩んでいて事業を引き継がないような場合に、従業員の中から承継してもらう形になります。このような承継以外では、M&Aという方式も最近は増えてきています。別の会社に、事業を買い取ってもらうという形です。
少し話が逸れましたが、親族内承継や内部承継では、長期的な計画をもって事業承継を進めていきたいところなのですが、先ほどの帝国データバンクの調査によれば、経営者の年代別で50代の約70パーセント、60代の約50パーセントが後継者不在だそうです。本来、事業承継を考え出さなければならない年代で後継者不在というこの現状に対して、何かお手伝いできることはないかと思い、杉村さんが代表を務める事業承継やM&Aに特化した株式会社C-NECTのパートナーとしての活動も行っております。
事業承継を進めることを決断するのは、経営者ご本人しかありません。周りからそういった話を出されても、まだばりばりと仕事をされているときであれば、早く引退するように言われているようでいい気持ちはしないでしょう。かといって、事業の目標をもって仕事にまい進しているときに、事業承継のために多くの時間を割くことも難しいかと思います。しかし、事業を営む以上、あなたに何かあった場合には、自分や自分の家族だけではなく、従業員や取引先、果てはその家族に対しても影響が及ぶということを知っておいてください。 実際、事業承継がうまくいってより発展していく会社もあれば、ろくに事業承継対策をしていなかったために存亡の危機に陥ってしまう会社もあります。また、後継者がいないために、黒字なのに閉鎖しなければならないケースなどもあります。
事業承継対策をしないリスク
例えば、事業承継対策をしていなかったために、会社の株式がすべて配偶者、子の相続の対象となり、経営権を巡って争いとなってしまい、会社の経営に影響を及ぼすといったことや自営業で事業用の不動産を誰が相続するかで揉めた結果、兄弟の一人が売却したため、後を継いだ別の兄弟が事業規模を大幅に縮小せざるを得なかったりしたという話も珍しい話ではありません。また、子を後継者とするのが急すぎたために、取引先や既存従業員との関係構築が十分でなく、不満を抱いた従業員の退職が相次ぐといった話など、不十分な対策によって後々事業の継続が難しくなるという事例は枚挙に暇がありません。
先ほど、事業承継のために多くの時間を割くことは難しいという話をしましたが、仮に時間は割けたとしても、事業承継を行うためには、会社の資産や負債などのお金の問題、株主総会など経営権を移す手続きなどの問題、融資を受けているのであれば金融機関との関係など、考慮しなければならないことは多岐に渡り、それぞれ専門的な知識も必要となります。これを経営者が一人でやろうとするのは非常に難しいことかと思います。そうしたときには、やはり専門家に頼って、分析を受け、アドバイスをもらい、ともに事業承継のための計画を策定していくことが有用かと思われます。
今回は、事業承継コラムの第1回目ということで、大枠の話だけ書きましたが、どういった点に気をつけて事業承継に取り組めばよいかなどもう少し詳しい話については、また次回以降のコラムで詳しく書いていきたいと思います。
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