■成年後見制度を利用するにあたっての注意点

司法書士 中山 泰道

【筆者紹介】
昭和55年生 京都市出身。大阪大学法学部卒業後、平成17年に司法書士試験合格。その後、金融機関・不動産会社の仕事を中心とする司法書士事務所2か所で勤務経験を積み、平成21年に大阪府豊中市で独立開業。
独立開業後は、不動産登記・法人登記・相続業務・成年後見業務等の司法書士業務を幅広く・数多く経験。成年後見業務の経験も豊富であり、メリット・デメリットを熟知。

【保有資格】
司法書士
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
不動産実務検定2級

■成年後見制度とは

成年後見制度は、大きく①法定後見制度と②任意後見制度に分かれますが、その概要は以下のとおりです。
(1)法定後見制度
精神上の障害により、既に判断能力が衰えてしまっている場合。誰が後見人になるのかは裁判所の判断(候補者をたてることは可能)
(2)任意後見制度
・判断能力があるうちに、自分が後見を任せたい相手と契約する(必ず公正証書で)。
・判断能力が衰えた時に、契約が発効。(死ぬまで判断能力の低下がない場合、契約は発効しない)
・必ず任意後見監督人が裁判所から選任される。

任意後見制度の利用はそれほど多くなく、一般的に「成年後見」というと、(1)の法定後見を指すことも多いので、今回は法定後見制度を利用する際の注意点についてまとめてみます。

■注意点① 希望する人を後見人にできるか

成年後見の申立をする場合には、原則、成年後見人となる候補者を記載して、裁判所へ申立をします。最初から弁護士や司法書士などの専門職を候補者にするケースもあれば、子どもや甥・姪など親族を候補者にするケースもあります。また、その申立ての際には、判断能力の低下した本人の推定相続人(その時点で相続が発生した場合、相続人となる立場の人)の「同意書」を添付する必要があります。例えば、父・母・長男・長女の家族で、父親の成年後見申立てを長男がする場合、母と長女の同意書が必要となります。

もし、この「同意書」を提出できない場合、成年後見の申立てはできるものの、裁判所から推定相続人の方に、この成年後見申立てに異議等ないかの照会がされます。例えば、上記のケースで、長男が自分が父親の成年後見人になる前提で申立てをしたとしても、長女が反対した場合、利害関係のない専門職が成年後見人に選任されるのが一般的です。よって、親族間に対立がある場合などは、希望どおりにいかないことが多いです。

■注意点② 親族が後見人になる際に本人の資産が多額の場合

本人の資産が多額の場合(基準は裁判所によっても異なりますが、預金が1000万円を超えるかどうかあたりが基準となります。また、株式なども流動性が高い財産のため、基準となる金額の算定に含まれる場合があります)、下記いずれかの手続きとなるのが一般的です。
A:成年後見監督人が選任される
B:一旦、専門職が成年後見人に選任され、当面使わない預貯金を裁判所の許可が無いと引き出せない預金として預ける手続きを行い、その後専門職は辞任して、親族後見人が単独で後見業務を行う(後見制度支援信託・後見制度支援預金)。

いずれも専門家の費用がかかってしまいます。ただし、Bの場合は1度きりの費用ですので、負担は少なく済みます。

■注意点③ 財産管理がきっかけで、親族間が揉めないか

親族が成年後見人になる場合、現時点では親族間の関係が良好であっても、親族後見人の財産管理方法がきっかけで不信感を抱き、関係が悪化してしまうこともあり得ます。成年後見監督人が付かないケースでは、裁判所が成年後見人を監督する(年1回、通帳等のコピーを提出してもらい、不正がないかを確認する)ことになっていますが、決して細かいところまでを見る訳ではないので、将来、成年後見人ではない相続人が生前の通帳を見たときに、親族後見人の財産管理に疑念を抱き、相続の際にスムーズにいかないこともあり得ます。そのようなことが懸念される場合は、後見人になることに慎重になった方がいいかもしれません。

■まとめ

成年後見人は、本人の法定代理人となり、本人の様々なことを代わりに行う権限が付与される非常に重要な役割です。また、「本人の財産・権利を守る」「できるだけ不正が起きないように」という点が最重要視されているため、場合によっては融通が利かない面や、使いづらい点も多々あります。今回紹介した注意点なども参考に、成年後見の利用を考える場合は、後で不都合が生じないかもしっかり考えた方が望ましいです。

最近は、「成年後見制度は使いにくい」というイメージを持たれている方も増えてきた印象があります。しかし、「本人の財産や権利を守る」という観点からは成年後見制度は非常に有効な方法です。例えば、判断能力のあるうちに家族信託を利用して、本人が管理する財産を減らしておき、その後、判断能力低下した際には成年後見制度を利用するというような方法もあります。成年後見制度利用の際には、専門家の意見も聞きながら検討することをお勧め致します。


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中山 泰道

不動産登記・法人登記・相続業務・成年後見業務等の司法書士業務を幅広く・数多く経験。
豊富な経験、知識を武器にサービス力の高い司法書士事務所を経営。
■保有資格:司法書士・2級ファイナンシャルプランニング技能士・不動産実務検定2級

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