「うちは仲がいいから、相続でもめることなんてない」
そう思っている方にこそ、一度立ち止まって考えてほしいのが「遺言書の有無」です。
相続トラブルの多くは、「お金に困っている人の話」「資産家の話」と思われがちですが、実際にはごく普通のご家庭でも十分起こり得る問題です。
特に、遺言書がない場合、財産の分け方を家族全員で話し合って決めなければなりません。これを「遺産分割協議」といいます。
協議といっても、全員が納得しなければ前に進みません。たった一人が反対するだけで、不動産の名義変更も、預貯金の解約もできなくなります。
実際に現場では、「お兄ちゃんばかり多くもらってずるい」「親の面倒をみたのは私なのに」といった感情のもつれがこじれ、相続が何年も進まないケースが多々あります。
では、なぜ遺言書があるだけで、これらの問題が避けられるのでしょうか。
答えは簡単で、「本人の意思がはっきりしているから」です。
遺言書は、「誰に、何を、どれだけ渡したいか」を明確にする法的な手段です。きちんと作成されていれば、遺産分割協議をせずに、記載通りに手続きを進めることができます。
「でも、遺言書って自分で書けるの?」「形式にミスがあると無効になるって聞いたけど…」という不安もあるかもしれません。
たしかに、自筆の遺言書は細かいルールがあり、書き間違いや日付の不備などで無効になるケースもあります。そのため、最近は「公正証書遺言」を利用する方が増えています。
これは公証役場で作る、より安全で確実な遺言書で、万が一のときにもスムーズに効力を発揮してくれます。
「遺言書なんて、まだ早い」と感じるかもしれません。ですが、実際に多くのご家族を見てきた私としては、「遅すぎるより早すぎる方が100倍いい」と断言できます。
家族の関係を壊さないために。
あなたの思いを正しく届けるために。
ぜひ、元気なうちに「遺言書」という選択肢を意識してみてください。