金融庁が2016年に発表した「平成27事務年度金融レポート」では、「貯蓄から資産形成へ」という項目があげられ、そのなかで、長期・積立・分散投資を通じた資産形成の必要性が前面に打ち出されました。
日本では、「投資」という言葉に対して、まだ誤解 があります。「投資」とは利益を見込んでお金を出すことで、株式や投資信託などの購入がこの「投資」に当たります。将来のために増やしていきたいお金は「目的」を明確にして、株式や投資信託などを利用した「投資」の形で、長い期間をかけてコツコツ増やしていく必要があります 。
投資信託とは
コツコツ資産を運用するという目的として、「投資信託」という方法があります。「投資信託」は「ファンド」とも呼ばれている金融商品です。
ご自身で運用をする代わりに、資金を投資の専 門家に託して運用をしてもらうのが「投資信託」です。得をすることもあれば損をすることもある、それが「 投資」であり「投資信託」です。
「投資信託」は銀行の預金などと同じ「金融商品」なのですが、「元本を保証されていない金融商品」ということになります。
実はよく、投資手段としての「変額保険」との比較をされるのですが、「変額保険」ってどんな商品かご存知でしょうか?また投資信託とどのような違いがあるのでしょうか?
そこで今回は「変額保険」ついてお話ししたいと思います。
定額保険と変額保険
生命保険は大きく分けて2つに分けられます。
「定額保険」・・・
契約時に定めた保険金額が運用実績に関わらず一定の(変わらない)保険のことをいいます。これは、保険会社の一般勘定で運用・管理される保険で、保険金額や予定利率などは保険会社によって保証されます。(死亡保障・医療保障・がん保障など多くの方がこちらの保険に加入。)
「変額保険」・・・
払い込んだ保険料のうち、積み立てられる分を株式や債券などで運用す「特別勘定」の運用実績に応じて、保険金や解約返戻金が変動(増減)する 保険をいいます。これは、死亡保険金(高度障害保険金)は保証されていますが、満期保険金や解約返戻金は保証されていません。定額保険は安全性が重視されるため、保険料は「一般勘定」で運用されます。変額保険は、運用リスクを契約者自身が負う“自己責任原則”のため、保険料は「特別勘定」で運用され、定額保険の資産とは、明確に区分して運用および経理が行われます。
特別勘定とは?
特別勘定は、保険会社が契約者から預かった保険料の運用を行う勘定の分類の一つで、運用成果を直接契約者に還元するために、他の財産と区分して経理される勘定のことをいいます。これは、運用実績に応じて支払われる保険金や年金などの金額が変動します。
特別勘定の運用については、国内債券に投資するファンド、日本株式に投資するファンド、海外債券に投資するファンド、海外株式に投資するファンドなど、投資対象の異なるファンド(投資信託)が複数本用意されており、契約者はその中から自分の投資方針(考え)にしたがって、適宜選択することができます。また、運用開始後も、マーケット動向を見ながら、自分の判断でスイッチング(他のファンドに乗り 換え)を行うことができます。(実際の運用成績によ って、将来の保険金や解約返戻金の支払いが変動することになります)
変額保険の種類
変額保険には、主に3つの種類があります。
「終身型」・・・
終身型は、死亡保障が一生涯続くタイプの変額保険です。運用の結果に応じて死亡保険金額や解約返戻金額が変動します。
ただし被保険者が死亡した際に払われる死亡保険金については最低保障が設けられているため、契約時に定めた保険金額を下回ることはありません。
「有期型」・・・
有期保険は有期型とは、死亡保障を得られる期間(保険期間)が決まっている変額保険です。保険期間は、「60歳まで」や「20年」など、年齢または年数で設定するのが一般的です。有期型の場合、契約期間の満期を迎えると運用実績に応じた満期保険金が受け取れます。終身型と同様に死亡保険金には最低保障が設けられていますが、保険期間が終了すると保障期間も終了となるため死亡保険金が必ずもらえるわけではありません。
「年金型」・・・
年金型は、保険加入時に設定した年齢に達した場合、年金形式で保険金を受け取れるタイプの変額保険です。受け取れる保険金は、運用の結果によって変動します。また年金型は、保険料を払い込んでいる途中で亡くなった場合、それまで払い込んだ保険料が死亡給付金として支払われるのが一般的です。商品によっては、年金を支払う元手となる資金である年金原資や、年金の受給総額、死亡給付金に最低保証が設けられています。
変額保険のメリット・デメリット
「メリット」・・・
①インフレの影響を受けづらい
変額保険の大きなメリットは、インフレ対策になることです。一般的な定額保険は将来的にインフレが起きて物価が上昇したとしても、受け取る保険金の金額は同じです。物価が上がったという状態は、相対的にお金の価値が下がってしまうことになるので、同じ保険金額でも資産価値が減ってしまう可能性があります。一方で変額保険は、運用実績によって保険金額が変わるため、インフレの対策として有効です。
②死亡保険金は最低保障がある
変額保険の死亡保険金には最低保障があることもメリットの1つです。変額保険は投資性の高い保険ですが、あくまで保険であるため保障がついています。死亡保険金受取時には、契約時に定めた契約金額を上回ることはあっても下回ることはありません。
「デメリット」・・・
①運用リスクがある
変額保険は、満期保険金や解約返戻金の最低額を保証していません。運用状況や解約のタイミングによっては、受け取るお金が払い込んだ保険料の総額を大きく下回ってしまうこともあります。定額保険では運用のリスクを保険会社が負ってくれるのに対し、変額保険では契約者が運用のリスクを負わなければならないのは大きなデメリットになります。
②保障部分にコストが掛かる
変額保険と比較されることが多い投資信託では、手数料や信託報酬などの一部のコストを除き、払い込んだ金額の全てが運用に回されます。それに対し、変額保険は保険という性質も兼ね備えたものであるため、運用のコストだけでなく保険金に対してのコストも掛かり、払い込んだ保険料全てが株などで運用されるわけではありません。死亡保険金の最低保障がある点はメリットでもありますが、単純に資産運用が目的の場合には投資信託を選択した方が、運用成績が良くなる可能性が高いといえます。
変額保険の上手な活用法
変額保険は運用実績によって受け取れる金額が変動しますが、死亡保険金は最低保障が受けられます。死亡保障と貯蓄、運用などを兼ねたいという場合には、有効に活用できるでしょう。
また、死亡保険金を受け取ることで相続税対策としても活用することもできます。一般的に相続税対策に利用する終身保険と比べて、変額保険は保険料がリーズナブルです。最近は、死亡保障だけでなく、介護保障や三大疾病などに備えられる変額保険も出てきています。
また保険には「貯蓄を守る」という機能もあります。万一のときに保険金が支払われることで、貯蓄を取り崩さずに済むからです。貯蓄を取り崩す必要がなければ、子どもの教育費のために……、老後資金のために……と貯めていたお金を本来の目的どおりに使うことができます。
何といっても最大のメリットは、残された家族に対して経済的な不安を取り除いてあげられることでしょう。つまり、万一への保障という点では、投資信託より生命保険の方が適しているのです。
複数の投資家から集めた資金を運用会社が投資先を考えて運用する投資信託と、複数の契約者から支払われた保険料の一部を資金として保険会社が特別勘定で運用をする変額保険、根本的なしくみとしては同じようなしくみです。
生命保険を上手に活用することでライフステージに合わせて「そなえ」ながら「ふやす」ことができます。変額保険の種類や、メリット・デメリット、注意点などについて解説しました。
変額保険は保険商品の中ではハイリスク・ハイリターンといえる商品です。リスクがあっても資産形成と、もしものときの備え(死亡保障など)が同時にでき、「長期」「分散」「積立」が可能な商品といえます。
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